時刻は22時50分

観劇とかの感想を緩く的外れに。

勇者セイヤンの物語(真) 雑感

 
 ロールプレイングゲーム(英: Role-playing game, 略称:RPG)とは、参加者が各自に割り当てられたキャラクター(プレイヤーキャラクター)を操作し、一般にはお互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲームである。
 ――ウィキペディア参照
 
 今年もよろしくお願い致します。推しくん、推しさん、関係各所様方には何卒健やかに活動出来ますよう、そして皆様が良い推し活が出来ますよう、お祈り申し上げます。わたしは今から夏の某スポーツの祭典期間付近の足と宿取りをどうするかで頭を悩ませています。発表されぬチケットの皮算用とか言わないで。
 というわけで2020年になってしまいましたが、2019年12月に公演された爆走!おとな小学生さんの「勇者セイヤンの物語(真)」の大阪公演(27日~30日)を観劇致しましたので、雑感を書いて行きたいと思います。観劇日は27日マチネ、28日マチネ、30日ソワレ大千秋楽。
 勇者セイヤンシリーズ、残念ながら前回の(仮)は見られずじまいで一昨年の(予言)のDVDを鑑賞していただけなのですが、今回の(真)を見てああ……ってなりまして、(予言)の一部ネタバレに言及するような事を言ってしまうかもなのでご注意ください。なるべくオブラートには包みたい。
 
 そもそもロールプレイングゲームのロール(Role)とはなんぞや、という話から始まるんですが、ロールプレイ、想像上のとある役割を演じ、ゲームを攻略していくっていう内容がウィキペディアなりネットなりで調べたら出てくるのですが、セイヤン(真)は〝役割〟とは何か、をずっと考えさせるようなお話だったなぁと思います。
 テーブルトークRPGだとダイスの目によって決まる能力値以外は割とプレイヤーの自由が効くんですけど(※それがGMの裁量で可であれば)、コンピューターゲームRPGは基本的に、ストーリーをなぞる為に主人公には役割が与えられているんですね。それは今回のセイヤンが自称する【勇者】だったり、【親友と謎の遺跡で遊んでいたらいつのまにか世界を救う旅に出ていた漁村生まれの少年】だったり、【めっちゃ強い傭兵を自称する金髪のツンツン頭の青年】、【入院している担任教師のお見舞いに行ったら東京が滅んで彷徨う事になったごく普通の高校生】等と様々な設定と共に主人公を旅立たせて、そしてだいたいの最終目的はラスボスを倒して世界を救う。そんな役割を与えられている。ゲームハードが進化して、主人公が【勇者】にならない選択肢がとれるゲームも出てくるようになったけれども、それでもエンディングであるエンドロールを見るためには、大体、世界を救わなければならない。
 そんな主人公というキャラクター、この物語ではセイヤンという自称勇者の少年を中心に世界は回っていて、セイヤンの為にフラグが立ち、ストーリーが進んでいく。彼が進まなければ、ストーリーも進まず世界も停滞してしまう。そして奇妙なのは、セイヤンは自分が勇者であり、この物語の主人公であることを自覚している事。そしてその先代であり尚且つ先々代である勇者ユウシャンも、先々代、本来の自分のの世代では自らが選ばれてしまった勇者であり、物語の主人公と自覚している。更にユウシャンは自分の世代で旅をしていた当時からセーブ機能を持ち、自分(プレイヤー)がゲームクリアを諦めない限りは何度でもやり直せる事を自覚している。ただし、未来の事は分からない。分からなくて当然なんですけどね、それこそSNSでネタバレされない限り、プレイヤーはその先のストーリーを知りたくてプレイしているんだから。
 勇者セイヤンの物語が、どこからどこまでが制作者(ここで指す制作者は脚本演出の加藤光大さんではなく、ゲームの制作者、シナリオを作った人の意味。いやどっちにしろ最終的には加藤さんなんですけど)の書いたシナリオだったのかというのをずっと考えていまして。例えば冒頭にエタノールとぶつかり、ポップコーン王国のコロシアムの優勝賞品である彼女を得るだけが本来のシナリオなのか、はたまた徹頭徹尾、勇者ユウシャンが三週目の勇者になるべくセイヤンの前に立ちはだかり、エタノールが〝我が儘を貫く〟までがシナリオなのか。個人的には後者かなぁ……とかは考えていたりします。後者だとユウシャンパティーの呪術師くんの死も、町の人2もとい山賊の女の子の死もシナリオであらかじめ決められたイベントであり役割であり、そしてそれを見聞きし体験したセイヤンの未来と課せられた役割を思うとなんかこう、思うところがありすぎるんですが。(予言)また観たいな、DVD観ようかな。
 役割って、扱いが難しいですよね。自分らしく生きられる指標であり、自分を縛り付ける枷でもあるし。
 本来の役割を奪われ町の人という役割を課せられた旅の一行とか、セイヤンを助ける役割を担ったセイヤンチームの面々やオバサン。先々代の勇者という役割を授かり前に進むしかなかったユウシャン一行、勇者に倒されるという役割という運命を疑問も無く受け入れるモンスター達やそれに疑問を抱いてしまったラスボス。最終的に二人の勇者を導く狂言回しの役割を与えられた呪術師、そして勇者という主人公の役割を自覚するセイヤン。
 そして何よりどう考えても色んな役割を担わされすぎてて完全にモブのような扱いなのに最早いないと困るオジサン。あなたはどのオジサンが好き?わたしはいきなり哲学の授業始める先生のオジサンが好き。
 最終的にセイヤンは過去を否定せずに全部ひっくるめて旅を続けるつもりだったけれども、エタノールの我が儘でほんの少し別の結末を迎えたみたいで、当初のシナリオ通りかどうかは分からないけど、そんなゲームを体験したわたしは少し不思議な感覚に包まれながら上記の事をぐるぐる考えています。
 エタノールの戦い続けるっていう台詞はは回復アイテムとして皆が笑顔になれるように戦い続けるって意味なのかなぁって解釈してみたり、最後のシーンの解釈はだいぶ人によって分かれそうなんですよね。
 
 今回気になったキャラクターとか役者さんとか。
 
 今口を開けばとりあえず大阪のオバサンの事を喋るぐらいには大阪のオバサンが大好きなんですけど、いやほんと新井さんのオバサン、めっちゃいい。面白くて若干天然で母性がすごくて頼りがいがあってかっこよくてその上美脚ってすごいなぁと思うんですよあのオバサン。相変わらず殺陣もかっこよくて素晴らしい。この件に関して何回でも加藤さんにお礼を言いたい。BARババア閉店とか寂しすぎるので暫くは心の中にBARババアを常時開店させてお仕事頑張りたいです。東京のオバサン(完全体)も観たかったなぁ。いや本当にキャッツアイの時にわちゃわちゃしたりポーズ決めるW(ダブルオバー)最高にキュートだからみてほしい。DVDで。
 多分現役の時とかに酸いも甘いも経験して色んなものを諦めたりして、それでも生きてなんぼと悟った彼女のやり方がBARババアなのかなと思うと、多分無許可だろうしリスクもあるけどそうせずにいられなかったんじゃないかな。あとオジサンとの対比が面白いなぁって思うわけです。囲われる事である意味特権階級を得たオジサン、生きてなんぼと街の人達を励ますけれども自由が一番だと知っているオバサン。
 
 
 副島さんの呪術師。ツイッターでも呟いたんですけど狂言回しとして怪しさが強い序盤からユウシャンの行く末を案じて憂い、セイヤンに助けを求めるような雰囲気を出してくる終盤へのシフトが素晴らしい。
 マジカル零で箱全体を困惑と爆笑の渦に叩き込んだジャヤヘーがこんなに活きるとは思わなかったしこれ実質副島さんにしか出来ないのでは……ってぐらい唯一無二感がすごい。
 ユウシャンチームのムードメーカーで呪術師という職業の字面に似合わないぐらいに陽気なキャラクター……なんですが「振り向かずに前に進んでください」の一言でユウシャン一行をここまで縛り付けたのはやっぱり呪術師故ではと思わずにはいられない。
 大阪初日マチネの終演後ずっと頭の中でぼんびりびりぼん……とぐるぐるしていたのもきっと多分彼の幸せになる呪いなんだと思う。ぼんびりびりぼん。
 
 春川さんのライッチュンちゃん。めっちゃ男前でええ子やんこの子……と思いながら観てたのですが、春川さん、(予言)でスラウィムボーグ演じていた方だったんですね。かっこよすぎる。(確認の為にセイヤン(予言)のHP眺めてたらなんとネルケ版セラミュのスターファイターの方でした。そらかっこいいわ)
 ユウシャンに拾われる前のつらい過去とかもあってスラウィムやピッカチュンにキツい口調で忠告していたのかと思うとああいう不器用だけど優しい子、いいよねってなりますよね。
 ユウシャン一行なんですがラスボスに近付くにつれて旅も過酷になっていく中で精神が疲弊していって進むか仲間の命をとるかで皆黙りこくってしまうあたりがめちゃくちゃ生々しくて居心地の悪さが凄くて、それが印象的だったんですよね。彼らの準備不足という言い方も出来るけど、モンスターよりちょっと強いだけだとかなり苦戦することもあるのでまさしく「こんなに過酷とは思わなかった」んだと思います。ユウシャンが最後にセーブしたのが一ヶ月前でそれがこまめにセーブを取らなかったという凡ミスになるのか、それとも物資が枯渇した状況で進むも地獄、戻れるかどうかすらも怪しい状態で迂闊にセーブして詰み状態にならなかっただけマシととるかは意見の分かれそうな所ではありそう。
 どちらにせよ呪術師くんが確定した死亡イベントなのか、それとも回避出来た事故だったのかは、今やシナリオを書いた人にしか分からないというところが、ちょっとだけ酷だなぁ、と。
 
 須永さんが演じたスカーレットくん。相変わらず須永さんのきゅるっとしたあざとい声からのめちゃくちゃドスの効いた声への豹変が好きです。目覚ましにしたい。あとぴょこぴょこしながら一心不乱に攻略本めくる姿がちょっと目が離せない。謎の中毒性がある。
 アイポンを駆使してセイヤンを助ける非戦闘型NPCな彼ですが、彼が出てくるとほっとしますね。妙な安心感。彼が出てきたらストーリーが進展したんだなぁとほっとするような感じ。死の間際までセイヤンを励ます姿はお助けNPCの鑑だと思います。
 
 街の人2役の石原さん。
 「ようこそ、ポップコーン王国へ」の一連の場面が凄かったですね。石原さん、感情を爆発させる演技がめちゃくちゃ良い印象はジャシステ再演の時から感じていたのですが今回の一度感情を爆発させた後の、スッと我に返ったように「もういいや」って言う声の冷たさに背筋が凍るような感覚を覚えました。前回観たマジカル零のあの現実逃避した無機質感とはまた違った冷たさ。奪われすぎて本当にどうでもよくなってしまった人間の自暴自棄感が出ていてこの方本当に凄いなぁと。この方の色んなタイプの狂気を内包した演技を見る事が出来た2019年でもあったなぁと思うわけです。
 
 4面のボス、林さん。
 いやヴィジュアル公開の時点で「美しすぎでは?」と二度見したんですが舞台上でもやっぱりお美しかったです。一番好きなのはコロシアムでセイヤンチームと戦った時に衝撃波のようなものを放った時の動き。バトルであの衣装がひらめくの本当かっこよくないですか。
 冷酷な、という設定を持ちつつ冷酷になりきれずなんだかんだで色んな人(モンスター)のお世話を焼いちゃう姐さん。愛読書は腕が伸びるありったけの夢をかき集めた人の本。基本的には合理的であろうとするけどどうしても情に弱い部分があるのが凄くかわいいな、と。3面のボスとのやりとりも姉弟めいていてほっこりしました。
 
 釣本さんの三面のボス。
  観ていくごとにどんどん好きになっていく。かわいい弟みたいなキャラ。個性、大事だね……。ラスボスになりたいと常日頃から言いつつちゃんと経験値もあげてラスボスに見合った個性を模索する姿をみるとこのこめちゃくちゃ真面目なんだろうな……と思わずにはいられません。
 大千秋楽の暴走っぷりもあのキャラだからこその愛嬌と面白さがあって本当に楽しませてもらいました。ついにツノが取れたの本当面白かったしハリセンの仕事ぶりが凄まじかった。あと三面のボスのビジュアルもめちゃくちゃいいですよね。あのメイク、凄い映えてる。回を増すごとにどんどんハリセンがいい音なってて、一番良かったのは大千秋楽のスラウィムナイトくんの尻をぶっ叩いた時の音だと思います。めっちゃ痛そう。
 
 オジサン、山田さん。
 ご親戚が沢山いるおかげでモブキャラを強要されている街の人達よりもモブキャラっぽいオジサンですが寧ろそれが個性すぎて忘れられないキャラ。RPGにいますよね、忘れられないモブキャラって。
 キャッツアイの場面の双子のオジサンからの叔父のオジサンもだいぶ笑ったんですけどやっぱり教師のオジサンがジワジワくる。友達が出来たね教師のオジサン……よかったね……

ラスボス、姉のオバサンの加藤さん。
 ラスボスくんの「バーカ!!!」の言い方が大好きなんですよね。学生時代にグレて皆につっけんどんな感じで接したりして悪ぶりつつも友達として大事に思ってるのも分かるし、〝RPGの法則をねじ曲げる〟のも自分達の世代になって友達との関係性が変わってしまってもモンスター側の平和を守りたかったんだろうなあっていうのが察せられるというか。人間側とモンスター側、もっと言えば人間側にもユウシャンとセイヤンのやり方は180度違うし、モンスター側もラスボスとエタノールのやり方は違っていて、それでも目指しているものが同じなのが複雑だなぁと思いました。
 あと姉として出てきたのが嬉しかったです。ありがとう美脚のオバサン。エタノールの力で世界が一巡した後も多分妹とわちゃわちゃキャッツアイしてるのかと思うとやっぱりBARババアは心の中で開店しているんだ……。ありがとうW(ダブルオバー)……。
 
 (真)のオープニングが本当に好きで、あの不穏な曲調が本編とマッチしてるのいいですよね。これからセイヤンに降りかかるイベントを暗示しているのがとても良かったです。純粋にかっこいいし。
   
 大阪大千秋楽のダブルカーテンコールで(予言)フラグがたったので楽しみ。いつなんでしょうね。王子に会いたい。