時刻は22時50分

観劇とかの感想を緩く的外れに。

100点un・チョイス! 舞台「team」雑感

舞台「team」雑感

11月半ばから年末にかけて所謂繁忙期と呼ばれるものに突入する職種についているんですが、結局なんだかんだで今年の年末も推しくんにお仕事が入りましたね、と丁度あいていた公休で遠征してきました。2019年推しくんおさめ。もう一人の推しさんおさめは12月半ばなんですが。
 師匠も走れば夜行バスも走りますよ。勤務時間も伸びに伸びるよ。やったね。
 
 さて、というわけで演劇ユニット 100点un・チョイス!さんの舞台「team」を観劇してまいりました。
 今回は28日のソワレ、Bチームですね。
 100点un・チョイス!さんの舞台は実に二年ぶり。以前「8」という舞台を公演されていて、推しくんも出演してはったんですね。「8」はクリスマスのクルーズで起きる殺人事件の話で推しくんは犯人の一人で「ついに推しくんが人を殺した」だなんて内心小躍りしながら楽しませてもらってました。いやだってそういう役も見たいじゃん。物語のありとあらゆる役を観たいじゃん。
 
 今回もネタバレありです。今週の週末まで公演している舞台なので未見の方はご注意くださいね。
 
 「team」のあらすじをざっくり言っちゃうと、舞台はとある舞台の本番直前、最終稽古当日の稽古場。脚本家の方針でクライマックスの場面は最終稽古の時まで知らされていないというちょと変わったシチュエーション。しかし稽古の時間になっても脚本家と主演の二人は来ない。狼狽える座組、そこに一本の電話が掛かってきて脚本家が事故で病院に運ばれたと伝えられ、更に主演とは連絡はつかない。主人公達役者、スタッフ陣の頭に過る公演中止の文字。しかし演出家は稽古の続行すると言いだして……。という聞いていて胃が痛くなってくるようなお話です。でもコメディ。
 
 何事においても不測の事態っていうのはどうしてもあって、それに対しての向き合い方ってその人となりが出るとは思うんですが、今回の登場人物もその〝不測の事態〟に対しての反応もそれぞれで、脚本や主演が不在の中で稽古を続けようとする人、それを無意味だと言う人、プロデューサーに連絡したい人、このまま稽古を続けていいのか迷う人と様々で、それはどの人も間違ってはいないしだからこそ同じ座組内で衝突してしまう。そもそもこうなる前から公演に向けた意識もそれぞれ違っているのが浮き彫りになっていくのも、そういったお互いの思いを知っていくのも、いい意味で人間臭い舞台。虚実入り交じりながらも座組目線から見る〝舞台〟とは何かというものの一端を覗き見た気分になれるお話でした。
 普段わたし達が見るものは板の上での彼/彼女達だけじゃないですか。最近はインターネットやSNSが発達したからこそ稽古場や楽屋の一部を見る事も多くなりましたがやはりそこは公演に向けてのPRを目的としたもので、彼/彼女達が日々過ごす一ヶ月近くの稽古期間の全てではない。わたし達が見る事のないその期間の中で、わたし達が知らない裏方の人達も含めて、公演の期間が長かろうが短かろうがそれを見せる為に試行錯誤し動いていくんだな、と思えるような舞台だったなぁと思うわけです。アイテムさんが劇中で座組に言い放つ台詞が印象的だったんですよね。公演できればいいものではない。確かにあの状態で公演されたらわたしだったら怒ると思う。
 脚本のラストも判明して主演もとある理由で数時間いなかっただけで無事だったし、座組が成長できてハッピーエンドだったんですけどそれでもホウレンソウは抜かっちゃだめだよぉ!
 仕事中のホウレンソウの大事さを感じることが出来るお話でもありましたね。
 
 コメディということで笑える要素も多かったのですが、シュールでパワープレイな笑いが好きなわたしはひぃひぃ言いながら観劇してました。秘書の方とアイテムさんの電話のくだり(「はいはい……え?」)は本当にツボだった。ああいうの好き。分かってるんだよ中身のない笑いなのは……好きなんだよ……。
 推しくんは失踪した主演役だったんですがあの混迷とした現場でいたらどんな演技をしていたのか少し気になりつつ、仲間の役者にダメ出しするクールな役者を演じられていて「おお……」と思ったり。苛立つ演技とかちょっとした感情の揺らぎとかを演じるのが本当良い役者さんです。あの夢のシーンよかったなぁ。
 そう、一番好きなシーンが主人公が熱に魘されて見る夢のシーンでして、公演後にお友達と喋っていたのが体調悪くて熱出してる時に見る夢がああいう感じだよねでした。分かる……夢って理解してんだけどあのふわふわした感覚。分かる。
 その中で脚本家さんが言っていた「我々作品を作る側は結末を知っているが、観客は結末を知らない」という旨の話も好きで、わたし達観客は事前に提示された〝あらすじ〟というヒントしか与えられなくて、結末を知るのは劇場でなんですよね。その公演を見るまで、わたしは今回見る劇はどういう話で、どういう結末なのか、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、推しは死ぬのか死なないのかとかまぁ色々妄想逞しく過ごすんで、ここも分かりみが深いなぁと。それこそこの「team」という舞台も、観る前も観ている時もどう着地するんだ……?って感じでしたし。趣味で物書きをしている身からしたらああ、そうだよなぁと思うところがありました。
 
 あと印象的な登場人物といえば演出助手(という言い方であってるのかな)の女性の方、演出家と役者とプロデューサーとの間で板挟みになりつつ必死に現場を回そうとする姿と身体をはったフォローがめちゃくちゃ可愛かったです。いやあのキャラ好きですわ……。
 それと小道具の種田くん。演じられている山中翔太さんは六月の「初等教育ロイヤル」で一度観ていたのですが必死に頑張る姿が本当に似合うし、頑張ってるのにどこか空回っているのが愛らしく思えてしまうのがとっても良いと思います。隅っこで色々やってるのも気になってしまう。
 プロデューサーのアイテムさんと秘書さんのやりとりも面白かったなぁ。アイテムさん役の相馬あこさんは前回観た時も思ってたんですがクールな役どころが似合う方で、今回の役どころも稽古場全体をしっかり締めつつ、キレのいいツッコミが心地良くて好きです。あと和服すごい似合う。
 
 Aチームも観たかったなぁ、と思いつつ。笑えて色々考えさせられる舞台でした。