時刻は22時50分

観劇とかの感想を緩く的外れに。

アイチュウ・ザ・ステージ -Après la pluie- 雑感

 じわじわと舞台が戻ってきている感がありつつやはり陽性が出ると中止にならざるを得ない状況ですね。夏の予定が一個消えたり、規模の大きい舞台が公演中止のお知らせを打っているのを見つけてはがっくり、という気分になります。
 恐らく2020年の推しごとは締めになります。あとは多分十二月のおと小さんとかを何回か観たり……あとは忍ミュ行きたいな……。仕事がかなりハードで体力がやばいです。常時赤色。
 
 さて、アイチュウ・ザ・ステージです。夏にライブを二日間やるつもりだったらしいですがやはりといいますかお知らせされることなく中止の憂き目にあっていたようで……とりあえず本公演が無事開催されてわたしも観られたのはありがたいと言うしかありません。なんだかんだで今年、推しごと出来てるんですよ。潰れたの二本ぐらいですかね、これはめちゃくちゃありがたいことです。
 ただ……特別公演ね、どうしてあの人を選ぶ公演を……池袋公演初日からの三日間にしちゃったの……。
 個人的な思いの話になって申し訳ないのですが、勿論特別公演をするのが嫌というわけではなく寧ろ二週間公演をする上で集客とか云々とか考えると趣向を凝らして中々チケットを捌けない平日に特別公演を企画するのは何の不思議でもないですしどうぞやってくださいなんです。観たかったら行くから。
 ただね、構成そのものを変えちゃうのは無しじゃない?と思ってしまうわけで。同タイトルの公演である以上、脚本はそのままでいて欲しかった。構成や脚本(これ特別公演、ほとんどエチュードですよね)を変えて観客置いてけぼりは商業的にどうなのというお話です。いや特別公演楽しかったですよ、わたしあの自由な空気が好きです。ただ商売的にどうなのという話。
 ツイッターで公式アカウントが特別公演です!と宣伝する中、何が特別なのかは告知されませんでした。出演者さんのアカウントも「特別公演は全然別物です!」という投稿だけで何が特別なのか一切明言されていない。恐らく箝口令的な指示が出されていたのでしょう。
 でも客側はアイチュウ・ザ・ステージ-Après la pluie-を観に行ってるわけで。本編観劇済みではない方もいるわけで。せめて運営さんには「観劇、配信視聴前提、なんでも許せる方向け」っていうこちら側へのアナウンスが欲しかった。本音を言えばなんでも許せる方向けっていう前提が既におかしいんですが。それ喜ぶ層と喜ばない層がいるよ?幸せになれない層もいるよ?大丈夫?って思っちゃう。
 ここのバランス…というかやり方が上手くいってなかったんじゃないかなというのが正直な思いです。難しいね。
 
  まぁそれはそれとして、特別公演は個人的に面白かったんですけど。
  パワープレイすぎる笑いに弱い。
 
 さてとりあえずは通常公演のお話に戻ります。
 今回は休憩なしの約二時間公演。感染症対策のため投票、声出しは無し。その為ライブパートはそれぞれのユニットで一曲のみ。うーん、二曲聞きたかった!
 推測の域を出ないんですが、多分これ中止になった8月のライブで今回新登場のAlchemistによるライブジャックがあり得たんじゃないかと思ってたり。ストーリー部分一時間で二部の雰囲気を醸し出すのは難しいですね、Alchemistのリーダー黒羽くんには今回語られなかった重たい事情があるのですがそこらへんの掘り下げがもう少し欲しかった所……とはいいつつあれは本当に一作では無理なので、次回に持ち越しという感じでしょうか。
 F∞Fの星夜くんが憧れる天上天下のリーダー、椿さんが投げかける「自分がどんなアイドルになりたいか」という命題を初演、ROSE ECARLATEのストーリーを踏まえて語られていくのがちょっとグッときてしまったり。この公演を踏まえての四月公演、どうなるのかが楽しみでもあります。
 さてここからユニット別の雑感。ライブ順になります。
 
 Alchemist
 あの穴あきピチピチ衣装を着こなせる人類がいるという事実に驚きを隠せませんでしたね!
 個人的には村松洸希さん演じるバベルくんがバベルくんでめちゃくちゃ良かったです。この方柿喰う客のメンバーさんなんですが聞いたとき凄い所から引っ張ってきたな…と。190センチの長身とスイッチのオンオフがあるバベルの演じ分け方、特にオフの状態の実年齢は成人なのに精神が幼いバベルを違和感なく演じていらっしゃるのが印象的でした。
 リーダーの瀬川拓人さんが演じる黒羽くん、平賀勇成さんが演じる朔空くんも訳ありを匂わせつつヒール役に徹していて、三部まで読破している身としてはアルケミってこんなに腹立つユニットだったか?と思い出してました。懐かしいね。あと朔空くんの筋肉凄くてびっくりした。
 ライブのNeverOverも高身長を活かしたパフォーマンスが素晴らしい。アルケミの楽曲自体がロックテイストでかっこいいのもあるんですが、実際に振り付けが加わるとほんといいですね。
 個人的にはしっとり系の哀しい雨がどうなるか気になるので次回お願いしたい所。
 
 POP'N STAR
 及川桃介くんがキャスト変更になりました。卒業発表が四月に行われる筈でしたが中止になったのは本当に残念。アイステージの卒業発表をきっちりしようとする姿勢はとても好きです。今牧輝琉さんの新しい桃ちゃんは男の子成分が強めで男の娘になる途中という感じがあって好きです。
 今回はShiny Butterfly。この曲ポプスタの中では一、二を争うレベルで好きなんですが、めちゃくちゃ良かった。設楽くんの心ちゃんの仕草が完全に男の娘だし、前嶋くんの月ちゃんの色気がどんどん増してる。
 一番好きなのは月ちゃんの「Don't Look Back」ですね。あそこは目が離せない。
 所謂女装をしたアイドルなんですけどその中でも男性特有の腕のたくましさとか立ち方が所々男性なのがすごくらしくて、全部許容した上での男の娘アイドル感が公演毎に確立されてると思っています。本当にいいよ、ポプスタ。あと今回ペンラ振るのが一番楽しかった楽曲です。
 
 
 Lancelot
 なんだかんだで仲良すぎてほっこり枠。一誠さんがどんどん自由になってそれに乗っかる双海くん、オチ担当三千院さんと既に役割分担が出来上がってるの本当に面白いですよね。
 今回はグラモフォン・ノスタルジーだったんですが、毎回毎回かっこよさがカンストしてる。振り付け凄くいいですよね。個人的に「僕達の恋をしませんか?」の振り付けが好きであそこ基本双海くん見てる。ダンスが飛び抜けて上手い。どうやって動いているのか分からん。
 わたし、悪くないぜ Easy daysを熱望していて是非おねがいします運営さん。他のナンバーより激しくはないけどしっとり系で観てみたい。絶対良い。
 
 IB(IとBの間にはハートが入ります/重要)
 推しユニットであり推しさんがいるので長いです。
 ついにアルケミが出てきた事で「朝陽くんのアレとかそれに伴うラビさんのアレとか話題に出てきたらどうしようわたしの情緒がしぬ」と心配していましたがそんなことなかったぜ!アイステージの基本方針はやっぱなんだかんだでハッピーなんだよ。いやまぁ推しさんが絶望顔でショルキー抱えたりするのは正直観たいしIBのエピソード単独でやってほしいな8割重たくなるけど。めっちゃ観たい。
 今回はというか今回もなんですけどアイステージのアイチュウ達の中では一歩引いて事態を眺めている五人でした。ゲスト出演の時の様子がおかしかったと言えるかもしれない。わからない。
 そんな中でもライブで対決形式と知るや「勿論参加するよね?」と闘争心を隠そうとせずにメンバーに聞くノアさんやそれに頷く四人が仲間というよりも最早戦友って感じで好きなんですよね。原作でもこの五人は戦友という言葉が似合うと思っています。
 練習シーンとかいいですよね。あそこの朝陽くんずっと観ていたい。ラビさんと顔合わせてリズム取りながらショルキー弾いてるのほんとかっこいい。アルケミが通り過ぎた時に探るようにじっと見つめるIBは年相応の負けん気の強さが出てて凄く好きです。
 あと千秋楽日マチネのね、Storm。アルケミ対IBだったんですがIBの圧が強くてビビり散らかした。
 いや本当にどっちがヒールなのか分からないレベルでしたね。彼らのそういう所好きです、あの勝つなら本気でとりにいく感。公式の写真見たとき全員強かったもん。
 ライブはとうとうCrew on Merry-Go-Roundがお披露目。
 いや多幸感よ。前回の新曲がライブでの未来ファンタジスタで、あれは本気で記憶が飛んだレベルでかっこよかったんですが今回はカントリー調の曲と相まってかわいさが飛び抜けてる。なんだこの五人。
 コール代わりのペンラでのサインとかクラップのレクチャーが特別公演から取り入れられていて、声を出せない観客としては凄く嬉しかったなぁ。
 あと一番言及したいのが須永風汰さん演じるラビさん。毎回須永Pとして職権濫用という名のファンサービス(とガチめの職権濫用)をしてくれていてもう須永Pに足向けて寝られない人間です。わたしはキャラとしての最推しがラビさんなんですが本当彼は演じる人全員に愛されてるなあと思ってます。
 今回のラビさんも立ち姿が微妙に治安が悪くて元ヤンが出てたのうわ好き…ってなってました。
 そんな中でクルメリのドラムがほぼ完璧なのが凄く嬉しいんですよね。今回めちゃくちゃ楽しそうにドラム叩いてるの。毎回楽しそうなんだけど、今回は本当にわたしの考えてるラビさんっぽいドラムの叩きかた(※ラビさんがどんな風にドラムを叩くかは現状アイステージでしか分からない/一月から始まるアニメに期待)でラビさんだぁあああうわあああああみたいな叫びだしたい気持ちに駆られてました。本当にありがとう須永風汰さん。
 推しさんも今回めちゃくちゃかわいかったな。なんだろ、原作の黎朝陽より確実に強いんだけど階段状で騒動をじっと見ている仕草とか黎朝陽で、彼の演技で好きなのが誰かが発したどの言葉に反応しているのかが自然に分かる事だったり、視線の持って行き方だったり所謂メインじゃない時も目が離せなくて困ったなぁってなるんですよね。あとやっぱりダンスがお上手だし体幹が意味分からないぐらいい。Stormの時の蹴りが意味分からないぐらい上がってた。その前にいた佐川さんのノアさんの蹴りも大概でしたが。
 結城さんのレオンくんの「楽しんでいこうぜー!」も最高に良かったし、たなこーさんの楽しそうなリュカにやっぱり多幸感を感じたりして、あとこの二人なんというか凄いナチュラルに仲の良さが滲み出てていいですよね。喧嘩しがちなのに仲が良い。アドリブが自然すぎる。
 相変わらず佐川さんのノアさんは歌が上手い。原作だと中の人が花江さんで声の性質の方向性は違うんですが、ノアさんなんですよ。あと相変わらず笑いに弱いノアさん。髪の毛弄って後ろ向いてたら大体笑い堪えてる。あとやっぱ佐川さんもダンス上手だなと思います。蹴りの天辺がおかしい。ロイヤル。
 次も出てくれー、そろそろLet's Goか?と思いつつボクラノオトされたら大変だ……。
 
 天上天下
 ついに一期生が登場しました。アイチュウの中で一番売れている一期生として、いかに先を行っているユニット、貫禄を出せるかという課題がつきまとうのが先輩ユニットとしての宿命だと思っています。どのアイドル系コンテンツにおいても。
 いや天上天下でしたね。花鳥風月。声が天上天下。どうしても原作で演じる声優さんと舞台版で演じる役者さんが違うとそりゃあ声も違うわな、というのは自明の理で、そこの擦り合わせをどうするかっていうのが難しい所ではあるのですが、歌ってる天上天下が原作の天上天下に限りなく近い。耳にした時おや?となってた。
 「杜若さんの女に今度こそなるかもしれない。どうしようやばい」っていうレベルで松本ひなたさん演じる葵さんのパフォーマンスを毎公演食い入るように見つめていたんですが、本当に危ない。あれは葵さんの女が増える。やばい。元々天上天下だと葵さんが好きだなぁ、考え方とか。って思っていたんですけど、彼がモットーとする優雅さの中に雄みが紛れてるのが好きで。完全に魅せにきてる踊り方ですね。次回公演に天上天下が出てきたら「今度こそ杜若さんの女になるかもしれない……やばい……」って毎回言いそう。
 
 F∞F
 この三人にはずっと感謝していて、特に初演から御剣さんを演じていらっしゃる小波津さんには本当に感謝しかないんですけど本当に腰は大事にしてください……そんな中出てくれてありがとうございます、と思ったり無茶だけはしないで……と心配になったりと、役者さんの怪我や体調不良は本当に、ね。また万全な調子の御剣さんが観れますように。
 ジュエリーダスト!ジュエリーダストですよ!
 今回の公演、北千住公演は流石に行けなくて、各ユニットのセットリストを初日に探してみたんですがジュエリーダストの文字を見た瞬間にうわああああってなりましたよね。ついにエトステ曲……。
 F∞F 、もういくつか曲はあるんですが(咲いては散る花のように、higher, HighER, HIGHER!)、前者はしっとり系で今回に歌う曲ではない感じ(わたしはライブで聞きたい)、後者はとある理由からこのタイミングで歌うのは違う(所謂三部の曲)のでエトステの一部曲であるジュエリーダストは妥当だと思います。
 ジュエリーダストね、好きなんですよ。まだCD出て無くて、12月23日にエトステのアルバム発売が初円盤かな。作曲した方が弱虫ペダルのOP手がけてた方で前から知っていたんですけど、エトステ楽曲発表時にマジか!?と驚いてました。F∞Fと凄くあってる。
 主演の川井雅弘さん演じる星夜くんも怒ったり悩んだりして等身大って感じなんですけど、その等身大さが共感できるのがいいですよね。あとカテコで推しさんの悪戯に付き合ってくれて感謝しかない。去年のライブでもF∞Fに面倒見られがちな推しさん。
 
 
 オリジナルキャストの方も毎回アイチュウ達に愛着をもって接してくれていたりして感謝しかありません特に田中さん役の田中さんと池袋さん役の大場さんは本当ありがとうございますとしか。田中さんのMCは安心出来るし池袋さんも相変わらずでしたね。次何色になるんだろ。
 
 
 特別公演
 書き出しでああいった事は言いつつ22日配信と23日は観たしなんだかんだで笑ってしまったんで。
 全般的に様子がおかしくて一体何を見たんだって感じですが友人の言っていた「風邪の時に見る夢」がまさにそれでしたね。
 とりあえず覚えてる事はクーポンと最上川と鼻で笑う黎朝陽が微妙にツボったのと国旗持って仁王立ちするラビさんとあっちむいてホイが弱すぎる黒羽くんとじゃんけんで負けて狼狽えてたくせにいざ本番になると強すぎる中国拳ホイとイラッシャイマセー↑と被害者のバベルくんとマイクスタンドを撫でる手がヤバい(ヤバい)黎朝陽と「二つ三ついいかな」と静かにガチ切れする御剣さんですね。何書いてるかわからないじゃないですか、何観たのか分からないんですよ。多分DVD届いて観てもわけわかんないと思います。
 
 次の公演は四月。色々と……収まっていたら良いな……というかゲームアプリのほうが更新がとまっていて今の所生命線が一月放送予定のアニメと四月のアイステージだけなのが……つらい……(本音)続いてくれたらいいなあって一年前にも言いましたね。
 もうこうなったらお金貯めて待つしか無いんですわ……とりあえず二月のキュアステは観たい……。
 
 というわけでアイチュウ・ザ・ステージ -Après la pluie- 雑感でした。
 仕事に追われてたらもう一ヶ月過ぎちゃったよ。
 
 千秋楽後、今年の推し活はこれで終了かなぁとか思っていたのですが、どうも12月のおとな小学生、「初等教育ロイヤル」で今度は推しくんが出るらしいんですよね。三年生で。
 佐々木くんだったらどうしようとずっと連呼してたんですけど(佐々木くん拗らせ人間)、先日キャスト発表がありましてまさかの加藤くんでした。加藤くんかぁ。
 世の中かなり緊迫している状況が少しでも改善されたらいいですね。一般人なので手洗いうがいしたりしてとかしか出来ませんけど。皆さま身体にはお気をつけください。

ナイスコンプレックス版12人の怒れる男 雑感(東京Aチーム編)

今年は感染症対策として演出面の変更あり。

大きな変更としては昨年舞台手前にあった見えない扉が奥に存在するようになったこと、円卓が長くなったこと。あとは演出のキムラ真氏がツイートしていた通り。 

 

ロビー入場時に非接触型の検温、アルコールによる消毒が必要。チケットはセルフもぎり。物販は通販のみ。

ロビーでは極力人が留まらないように随時声かけをされていて徹底した対策をされているなといったところ。

尚今回RY傍聴席が中止になり(前方二列を廃止して)実質最前からの二列に振り替え。自分で組み立てる型のフェイスシールドの着用を義務付けされてました。わたしは今回はRY傍聴席いかなかったのでその後ろから見てたんですが眼鏡とシールドが合体したようなもので興味が湧いた。つけ心地どうなんでしょね。

座席は市松配置。博品館劇場の性質(なだらかな斜面)と12人の怒れる男の舞台設定上、どうしても前方は見づらい時がある。高めの舞台だと特に。三列目でちょいちょい奥の一号二号が見えづらかった。

去年のTACCS1179でも最前だと奥の役者が見えない現象が起こってたけど対策となると奥に向かって斜面を作るぐらいしか思いつかない。それはそれで見栄えや役者の負担的にどうなんだって話ですが。

出演者はマウスシールド着用。開演五分前に守衛役のよこのさんが陪審の準備をするという芝居で机、椅子等を丁寧に除菌。クーラーの風に心地良さそうに手を広げる彼はほっこりポイントなので観て欲しい。

 

今回は東京A、東京B、大阪A、大阪Bの4パターン。両方に複数パターン出演される役者さんもいるものの印象としてはがらりと変わっている。わたしが観たのは東京A二回東京B一回。大阪公演も両方観る予定。

(いや東京はもっと観る筈だった…7/31-8/2が消えました)

当記事は東京Aについて。初日昼夜公演を観劇。東京B及び大阪ABはまた別に記事にしたいとは考えてます。

 

いやあの、最高だな、と。ナイコン12人を生で観るのが去年に引き続き二回目でして、去年も満足度の高い観劇をさせてもらってめちゃくちゃ楽しかった夏の記憶だったんですけど。去年には去年の、今年は今年の比べようがない良さってこういうことなんだなぁといった気分です。同じ題材で別の役者さんが演じるのを観続ける事が出来る、去年も出演した役者さんが同じ役、ないしは別の役を観る事が出来る。毎年の積み重ねを感じる事が出来るという贅沢さは中々体験出来ないのでは。これからも続いていって欲しい公演の一つだと改めて感じました。

 

さて今年も一号から順に雑感を。

 

陪審員一号(東拓海さん)

去年は大阪公演のみの一号でしたが今年は東京A、大阪Aでの出演。アクの強い12人を纏めようと奔走する体育教師の役です。

去年の大阪公演も観てて、昨年までの東京公演で演じられていた登野城さんの一号に比べて体育教師感満載だなぁ(友人と喋ってたのは登野城さん一号は赴任三年目の担任持ち、東さん一号は赴任一年目の副担任ポジみが強い)というぐらいにパワフルなイメージだったのですが、今年は更に振り切れた印象。野球のフォームとツーブロックが気に入らない体育教師(アメフト部顧問)。より我を出していく方向性かな、と思いました。他のメンバーの言い合いを眺めて胃を痛めてそうな渋い顔をしていたのが印象的。

陪審員一号の陪審員長という肩書を気に入っているという役どころを声を張って重々しく、時にオーバーリアクション気味に振る舞うという演じ方におお…となりました。大阪Aではまたメンツが変わるのでどんなキレ方をするのか楽しみ。

 

陪審員二号(登野城佑真さん)

夏にスケジュールを詰めがちなのは今年も変わらず(げんせんじゃ〜公演の約一週間後が十二人公演)。

キャスト発表前に「今年はどうかな〜?日程的にあり得そうだけど」とか言ってたら案の定出演されてる上にまさかの二号に役が変わってた時のわたしの戸惑いようは上半期ベストでしたね。

2018、2019に続いて三度目のご出演。前回まで一号でしたが今回は隣に移って二号役。眼鏡。わぁお最高じゃん。穏やかながらも怒りの瞬発力が凄まじかった一号から気弱な二号をどう演じるのかと楽しみだったんですがまぁとても良かったです。纏っている空気感がTHE 僕ちゃん。

去年の山口さん二号はにこにこへらへらしながらもどこか鋭いものを隠し持ってるような食わせものといった印象を受けていたんですが、登野城さん二号はあんまり空気の読めない気弱な若者に全振りといった感じ。ただし馬鹿ではない。空気読めなさすぎて馬鹿っぽく見えるし、メモをめくって食い入るように観る様は滑稽に見えるけどそこから積み上げていった問題から疑問を感じた瞬間からの芯の通り具合は素晴らしいの一言。

歩いてるだけでこいつは気弱で小物な男だって一発でわかる演技って凄くないですか?姿勢、歩き方、眼鏡の使い方ひとつひとつが二号という人物を表している。確かに二号は発言力や存在感が薄めのポジション(≠実際に薄い)なイメージなんですが、でも確実に二号であると分かる所作。馬鹿っぽく、滑稽に見えるけど彼は真剣にで、だからこそ男達が行き詰まった場面でのターニングポイントへの一手になり得た。そんな二号さん。

彼があからさまに怒りを露わにするのは二回なんですけど、一回目の独り言のような怒りと二回目の三号に向けての怒るそのグラデーションも素晴らしい。そして相変わらず声がよく通る方です。

いやほんとにもっと観たかった…。

 

陪審員三号(小林健一さん)

はじめましての方。いやあの知ってはいました。マグダラで鯨井さんに痛めつけられて嬉しそうにしてた方という覚え方で。何で観たかな…DVDか…?

強面感が強く圧倒的パワハラ型オッサンであるさひがしさん三号に対して小林さん三号は喋ってても面倒くさいし怒るととても面倒くさい型オッサン。どっちも厄介すぎる。三号は毎回血管は大丈夫か?というほどキレ散らかすんですが今年に関してはそこに酸素は大丈夫か??が追加されましたね…。マウスシールドつけて演じるのほんと大変そう…。

三分に一回は怒鳴ってる三号さんですが小林さん三号もガンガン怒鳴る。しかしどこか妙な憎めなさがあるような、コミカルさも含まれてる印象。最後の有罪だと言い張る場面は子供に出ていかれた親の怒りと後悔が混ぜこぜになった、どこか寂しげな演技が印象的でした。

十二号に無茶振りされつつも付き合ってあげるあたり怒ってない時は割とノリの良い人なんだろうな。

 

陪審員四号(横井翔二郎さん)

はじめましての方。

昨年の東さん四号、足立さん四号とはまた色の違う四号さん。八号に反論する姿は不思議な色気がある。全編通して感情の起伏が終始フラットな分、十号に対して怒りをぶつける姿はとても印象的。十号が部屋の隅で黙った後で怒りにまかせて机を叩く姿が記憶に残りました。あと新聞を取られた時に戸惑ってるのが人間的だし眼鏡の件で八号に対してある意味負けを認めたかのような有罪ではない宣言はどこか清々しく好印象。

 

陪審員五号(吉本孝志さん)

昨年に引き続きスラム生まれの五号さんを演じてらっしゃいます。去年に比べて苛立ちのポイントが分かりやすい印象。これは全体的に言える事かも、舞台が広い分…。スラム生まれという社会的な負い目を感じていて卑屈にならざるを得ない、そんな五号に見えました。あとちょいちょい色んな人の地雷踏む。

ナイフの喧嘩の再現が昨年よりも慣れた感じでかっこよかったなぁ。

 

陪審員六号(滝川広大さん)

こちらの方も昨年からの続投。昨年よりも舞台と観客が遠くなったとは言えあのガタイのでかさと声の通りで三号や七号を圧倒する滝川さんの六号は安心感があります。今年は更に髪の毛が明るくなって見た目の圧と八号を気遣う穏やかさのギャップが大きい。

印象的だったのが十号と取っ組み合いになる寸前の場面。十号の室さんも高身長なので迫力あってわかってはいるものの怖かった。そしてその間を割り込む十一号さんでちょっとフフってなった。

あとクーラーの電源が入った時の顔は見ててほっこり。

 

陪審員七号(古谷大和さん)

個人的に12人の怒れる男の中だと七号を一番注目して観てると言っても過言では無いなと思ってます。昨年の井上さん七号の狂犬っぷりが印象に強く、今年はどうなるのかな…と(笑)

古谷大和さん。昨年の春に観たとなりのホールスターぶりですかね。

とても素晴らしい七号でした。場を引っ掻きまわす役割を与えられている七号ですが古谷さんの七号は茶目っ気と自由奔走さの中に色気が垣間見えて不思議な魅力を感じたなぁ…と。あと行儀が悪い。机に座りがちなんですがそれがピタっとハマるし絵になってしまう。危ない色気を持っている。多分モテる。ツーブロだし。

第一声のメタな発言ともとれる窓やエアコンのくだりは個人的には観客と舞台の壁を取っ払う意味に取れて好印象でした。わざとらしく、さりげなく。身構えていた観客側の空気があそこで柔らかくなった気がする。

 

陪審員八号(濱仲太さん)

安心と信頼の濱仲さん八号。この方の演じる八号の理論の積み重ね方は硬質でありただ事実を淡々と、疑問を整理していくという行為に終始していてそれがとても心地よく感じると毎年思っています。その中で三号に対して「容疑者は息子ではない」と怒りを露わにする場面の説得力が重みを増してるのがいいなぁ、と。今年は昨年の東京と大阪の演じ方の間っぽいかなと勝手に思っています。

昨年は観客席側に扉(という設定のもの)があったので、最後の八号が陪審室を眺める顔が見えなかったのですが今年は舞台奥に扉があるので顔が見えるように。あそこの雰囲気良いですよね。

 

陪審員九号(松田洋治さん)

昨年からの続投。寂しく、穏やかでありながら怒る時は怒る。七号に怒っている時は本当に大丈夫かとハラハラしてしまいます、はい。

社会的弱者である九号が証言の老人の心情を語り、そして最後の最後の有罪の証拠である女性についての矛盾に気づきはしゃぐ姿はある意味で被るのでは?と考えてみたり…。

 

陪審員十号(室龍規さん)

昨年の大阪公演からの続投。室さん自体は昨年十二月ぶり。昨年は大阪公演だからかバリバリの関西弁だったのですが(そもそも大阪公演が関西弁が飛び交う空間であれはあれで好き)、今回は標準語。

ヘイトを撒き散らす事を厭わない人物の十号。今のご時世にはストレートに現実に刺さる登場人物ですね。最後までスラムへの偏見を改める事のないまま、十一人の男達に背を向けられ狼狽する姿が今回めちゃくちゃ好きです。あの段々弱々しくなっていくのに息を潜めたくなるような。自分が間違った認識でいると突きつけられた時、人はどんな反応をするかというのも12人の怒れる男の魅力だと思います。

 

陪審員十一号(山川ありそさん)

移民という難しい役どころの十一号。演じる山川ありそさんは2017年の破壊ランナー以来です。2016年に見たロボロボが記憶に強いな…。

昨年の竹下さんの十一号が偏見に晒された若者ならばありそさんこ十一号はもう少し年齢が高め。太く、落ち着いた声と振る舞いがまた違った十一号で素晴らしいです。陪審員制度を語る場面は言葉を探しながらも制度やその場にいる12人に対して謙虚であり、真摯といった感じ。聞かせる力が強い十一号です。

 

陪審員十二号(尾形大吾さん)

昨年の大阪公演で大暴れした尾形さん十二号が今年も参戦。昨年よりもパワーアップして帰ってきた感が強いです。機関車トーマスはズルい(笑)

終始ピリピリしがちな空間の和ませ役。七号が混乱に陥れる悪魔なら十二号は場をリセットする道化師といったところ。最後の最後までのらくらと自分の意見を持てないままの彼ですがそれでも時折見せるクレバーさ、鋭さが癖になります。個人的には十号に十一人が背を向ける場面が印象的。あそこでどうにもならないと呆れ、怒りを含めて笑う十二号は必見です。文句なしにかっこいい。

 

東京Aチームは登場人物の性質のスタンダードを抑えつつもちょくちょく面白い事をやっている印象でした。クセがなくとっつきやすい上にあんなに面白いのなんでですかね。各々の演技のクオリティが高く(そもそもこの演目に出る役者さんのクオリティは東京AB総じて高めだと感じています/この行書いてる時点で東京B観劇済み)、安心して観れるメンバーです。

12人の男が様々な事で怒り、感情を露わにする様はいま現在の閉塞した世の中ではいっそ清々しく感じました。

感染症対策もでき得る限りをされてるなと思いましたし、もし外に出るのは…という方に配信もご用意されているようなので興味のある方は是非見てほしいと言いたい一本です。

 

爆走おとな小学生「パニッシュメントクレイン」 雑感

 ※この記事は五月十六日、十七日に配信の爆走!おとな小学生の「パニッシュメントクレイン」のネタバレが含まれています。
 
 四月後半から五月半ば、色んな支援プロジェクトがそろそろと立ち上がるのを眺めながらどうすればわたしの好きな事を納得する形で応援を出来るのかと考え続ける日を送っています。あんまり考えすぎるのも身体に毒ですんで、上手いこといきたいものです。
 さて、四月、五月、六月の観劇予定が全て潰れてしまって(と同時に予定がなにもなくなってしまって)、おうち時間とか言いながらDVD流したり、某ゲームで島作ったりして過ごしてた所に、今回の通信授業です。
 そういえば数日前にタツノオトシゴの物販が届きました。いや本当に観たかった。私、観劇したい。正確には夜行バス乗って観劇して夜に酒飲みながら友達とわいのわいのしたい。
 
 今回の配信は無観客、演者と演者の距離を保つ、一時間の公演時間のうちに演出として数回の除菌スプレーの使用、小道具の受け渡し方法の徹底と事前にアナウンスがありまして。演劇という行為自体が今で言う三密やソーシャルディスタンスの維持が難しく、そんな中でどういった形で配信や公演を行っていくのかっていう所はかなり気になりながら観ていました。
 あのアナウンスのようなこれだけの対策をして公演または配信に臨みますという社会へのアナウンスは大規模であれ小規模であれ、対策方法はそれぞれだとは思いますが暫くは必要になっていくのじゃないかなぁ…。
 
 パニッシュメントクレイン、punishment=処罰、刑罰 Crane=鶴
 主人公の美沙紀の語りから始まる形のミステリーですね。美沙紀の夫が青酸カリで突然死、警察は自殺と断定、葬儀の日に加藤と名乗る男が現れ…というお話のさわりとしてはかなり典型的な部類ですね。美沙紀と加藤の会話を中心に美沙紀が知らなかった夫の一面、人間関係、そして夫を殺した真犯人に迫っていくんですが、やはり上記の縛りとも言える演出で殆ど会話劇と言ってもいいでしょう。

公演時間は一時間なのでかなりスピード感があった印象です。初日初回、初の無観客配信という事で演者さんからかなりの緊張が伝わっていたのと、話の展開スピードから一種異様な緊張感を感じたりとこちらも油断したら無事では済まないような気分で観ていました。
 主人公の正体が加藤の会話に出てきた白鳥であると判明する場面で、美沙紀と白鳥という存在が記憶を辿るという行為の中で重なり合うという一種の高揚感を感じられる所をもう少し丁寧に描いてくれれば、とか最後の怒濤の種明かし的な展開で気持ち的に少し置いてけぼりにされた(良い言い方をすればどんでん返しの連続であった)と同時に割と途中から展開が読めてしまったが故に登場人物に感情移入がしづらくなってしまったのは少し残念な所ではあるかもしれないなぁという気持ちです。アゲハちゃんの犯行の動機が弱すぎるっていうのもあるのかも。引っかかった所は多々あってそこらへんちょっと見逃しているかもしれないので大千秋楽に観ます。
 ただ一時間という短い公演の中で繰り広げられる序盤の加藤さん脚本の特色ともいえるシュール味溢れるどたばた感が、じわじわと違和感に変わりあのひりついた緊張感を伴ってラストに向かって崩壊していく作風は今の状況が閉塞感強くてやってらんねえな感のある人には良い意味での刺激になるかもしれません。全員どうしようもない人間がどうしようもないきっかけと理由とやり方で負の連鎖起こしてます。加藤さん脚本の最早お約束となった時事ネタも盛り込んでて苦笑いするところも有り。

折り鶴千回折ったら千羽鶴だから千匹目に結婚しようはある意味凄い殺し文句ではと思いました。ロマンチックと狂気が混在してるの凄いし怖くないですか?わたしはこわい。山田さん、嫌な奴とかどう考えてもおかしいのにしれっと通常ですよみたいな顔でいる役が似合うのは最早才能だと思います。だんだん癖になってくるのも怖い(褒め言葉)。多分人は狂気的なプロポーズをされると判断能力が狂うんだと思う。

あとおと小さんの女性陣はどうしてこう瞳孔かっぴろげてる姿が様になるのだろうか。


 
 ここから先作品の話じゃないですけど、これ書いててふと浮かんだ事がありまして。
 創作上の登場人物にどうしようもないなぁって笑うのは癒やし効果があるのかなぁと。登場人物の言動を間違っていると断じて笑い、いや本当はどうしようもないのではと考え、ある時には自省する。そうすることで自分の中のモヤモヤしてる怒りや悲しさを幾分かは軽く出来るのでは、と。
 架空の人物に対しては、現実にいる人に対してよりは冷静になれる。創作上の存在が馬鹿をやってもある程度は笑って馬鹿だなぁと言ったり、あいつは酷い奴だけどといった事も言える。それは物語とわたし達読み手や観客の間に第四の壁があるという前提があるから。現実で、目の前で、最悪伝聞だけでも〝馬鹿なこと〟や〝酷いこと〟を見聞きすると苛々するし腹も立つし、ともすればちょっと過激な事を考えてしまう。わたし達には心があるから。ただ社会的に言えない時もある。言ってしまうと自分が〝馬鹿な人〟になったり〝酷い人〟になってしまうのではとブレーキがかかる。(勿論、〝言う事は馬鹿なことではない〟とブレーキをかけない人もいる/そこに関しては個人の価値観と、発言の自由と責任のお話になりますので割愛)
 ただブレーキをかけたところで、心の中に溜まった苛々や淀みが消えるわけではなくて、そういったものが溜まっていくとしんどくなったりするじゃないですか。底に溜まっていた黒いものがある時ふっと浮かんで舌打ちをしたくなる時とかあるじゃないですか。そういうのを軽くしたり出来る行為の一つが創作に触れる事だよなぁ、なんて考えてます。架空の事象や人物と現実の出来事がほんの少しリンクして何かを感じる。それで苛々とか怒りとか、悲しさとかが消化されれば儲けものだなぁと。久しぶりに配信というスタイルながらも現在進行形のお芝居を観てふと浮かんだ雑感でした。なんか新鮮な気づきではあります。
 いつにも増してとっちらかってるなぁ…申し訳。
 
 
 いやでもやっぱ演劇、生で観たいよね!!!!!!!!というのも正直な気持ちです。わたし達がいた世界は、贅沢な世界だったのだろうなぁ。

爆走おとな小学生舞台「Office9no1」雑感

いや分かってはいたんですけど夜行バスガラガラでしたね。あと宿も。こんなにガラガラなん初めてですよ。早く元に戻れば良いなぁ、と思いつつ行ってきました、観てきました。
 

今回は2月27日~3月8日の公演でして前半伊賀流、後半甲賀流とキャストとエンディングが変わるという事だったのですが、今回は観劇と遠征の都合上甲賀流のみの観劇です。推しさんとペダステの期間が被ってなくてホッとした自分がいる。伊賀流はDVDで拝見します。よろしくどうぞ。
 甲賀って本来はコウカ、と読むという脚本演出の加藤光大さんの情報にへえーって思ってたんですが確かにうちのATOKさん、コウガだと〝甲が〟って出てコウカって打つと〝甲賀〟ってちゃんと出る。うちのATOKさんの融通が利かないだけかもしれないだけかもしれませんが。
 あと甲賀流と聞くと真っ先に大阪アメリカ村たこ焼き屋さんが浮かびます。ねぎソースが好き。
 
 公演前からコメディ、と明言されていたのですが初等教育ロイヤルやジャシステシリーズで色々と慣らされてしまった弊害か疑心暗鬼に陥っていた事は認めます。天邪鬼のせいですね。
 だってマジカル零とか公式HPに〝魔法少女になりたい系の男女18人が繰り広げるドタバタ青春学園コメディ!?!?〟って書いてるんですよ。登場人物の殆どが死ぬコメディってなんだよって言いたくなりますね。いやめちゃくちゃ面白かったですけど白鳥の沼とかジャヤヘーとかタピオカとか。
 「で、何人死ぬんです?」って素で考えちゃったのは本当反省してます。多分天邪鬼のせいですね。
 確かにコメディでした。茶番あり、下ネタあり、ご都合主義あり、風刺ありの、加藤さん脚本特有ともとれる毒ががっつり効いたコメディ。正直に言うと観客側の合う合わないがかなり分かれるんじゃないかなぁと思いながら観てました。7日マチネでおや?と思ったんですけど、神林証券の社長のセクハラのくだりで笑う人笑わない人の差がはっきり分かれててかなり興味深かったです。それが良いか悪いか、という感情を抱いたのではなくてこんなにはっきり分かれるものなのかという感じ。それが認識や価値観の違いなのだろうな、とふんわり思ったんですが観客の反応の違いを狙ってるのかどうかは分からないのでただそういった印象が強かった、とだけ書いておきます。あの体験はちょっと新鮮だった。
 あらすじ的にはくノ一達が企業に取り憑いている妖怪を退治してお助けします!ピンチになってフリーランスの忍者太郎が現れて主人公のくノ一が恋をして……みたいな感じなんですが、ブラック企業も千差万別という事でパワハラ系ブラック居酒屋、セクハラ系ブラック大手証券会社(ただし待遇面が怪しいレベルでホワイト)が出てくるんですけども。こう、あるある……って感じですね。いやああいう所本当にあるんですよ、本当に。
 ちなみにわたしは猫派です。帰ったら飼い猫二匹にどこ行ってたんだよって顔されました。犬もかわいいですね。
 
 印象的だったキャラクターとか役者さんとか。
 
 林千浪さんの九乃市久美孤ちゃん
 コメディもシリアスもクールもキュートもちょっと物悲しい25歳独身女性もばっちり演じられるの凄くないです?去年のマジカル大戦から拝見してますが毎回凄いなこの人…って毎回思います。
 久美孤ちゃん。妖怪クォーターでありくノ一ということ以外は全く普通の25歳女性で、イケメンに弱い所とか金にうるさい癖に自分はルーズな所とかもあるけども基本的に強いくノ一だなぁって思いながら観てました。どんな困難もなんだかんだで解決して、困っている人を助ける姿が印象的です。
 あと天邪鬼くんに対する感想が全面同意すぎてずっと頷いてた。わかりみが深すぎる。
 居酒屋チャムニーの「ン麻呂ちゃん!」の言い方めちゃくちゃ好きですし、かっこよくかつキュートに任務をこなすくノ一ちゃん最高じゃないですか?親友に裏切られてもその親友を信じ切るのもめちゃくちゃかっこいいなぁと。あと「ポッ!」ね。あそこキュート指数がカンストしてた。めっちゃかわいい。

 

 石原美沙紀さんの九乃市京華ちゃん
 今回すっごくかっこよかったなぁ、という感想が強いです。キャラクターの性格がクールなのもあるのかな、居酒屋チャムニーでドンペリラッパ飲みする姿が強烈すぎてですね……何か、何だろう素直にかっこいいとは言いづらい筈なのにかっこいい。そんなホスト狂い京華ちゃん。酒瓶持って満面の笑みが可愛らしいです。
 貢ぐ相手に求めていないと嗤われつつもそうせざるを得ないっていうのがこう、ね。それでも最後親友を斬れなかったのは貢ぐだけが彼女の生きがいではなかったって事じゃないかなぁと思います。
 ツイッターでもぽそっと言ったんですけどダンスが力強くてかっこいいなぁって割と目が離せなくてですね。流石アイドルさん……ってなっていました。あと青が新鮮だったな、なんでだろ。
 


 登野城佑真さんの天邪鬼くん。
 あの本当口開いたら天邪鬼くん尊いしか出ないのですが……凄かったですね。キャラクター的に好きすぎました。開演10秒の時点でこれはもう最高を約束されているのではという予感しかしなかったんですが案の定でした。ずーっとハツの心拍数上がってるの。かっこよくてかわいい。
 最初残虐な天邪鬼って感じを全面に押し出してるのに久美孤ちゃんにからかわれる所からめちゃくちゃ可愛らしい。久美孤ちゃんのぎゃわ゛いい゛!!!!に全面的に同意するしかない。あのドスの効いた声で唸ってるのも、割と素直に素直じゃないの認めちゃうのもあまりに可愛い。推しさんが壁ドンされるとは思いませんでした。今もう可愛いしか言っていない、これはもうしょうがない。素直に言います、かっこよくてかわいい。
 終盤の久美孤ちゃんを守って気持ちを伝える所とか男前ですよね。もう久美孤ちゃん素敵な男いるじゃん…忍者太郎より絶対いいよ、漢じゃん天邪鬼くん…三年後ぐらいに絆されちまえよ…という気分になりますね。大団円の後の律儀に「おはようございますでござる!」ってちゃんと語尾をござるにしている所とか、久美孤ちゃんの隣に座りたがって律儀に座っていいか聞くけど駄目って言われて素直にやめる所とかかなり素直になって天邪鬼のアイデンティティーを捨ててる所とか、「あ、この子めっちゃええこやん……」ってほっこりしたので天邪鬼くんに幸あれ。
 殺陣凄かったですね。加藤さんと登野城さんの殺陣観るの初めてなんですけどすごくかっこいい。大嶽丸さんが刀一本で、天邪鬼くんが二刀流っていうのもいいですよね。一撃が重いタイプと手数タイプ。
 それと記憶に残ってるのが大千秋楽の白柏寿大さんの忍者太郎との殺陣でして、熱量が凄かったなぁ、と。肩がつって当たっててちょっと驚いた。なりふり構わず自分の封印を解く為に女を利用しようとする忍者太郎と自分の個性を捨ててまでその女を守ろうと自分より強い相手にも怯まない天邪鬼くんとの意地と意地のぶつかり合いみたいな……。ね、燃えますね。そういうの大好きです。
 そして登野城さん、本日(3/10)お誕生日だそうです。おめでとうございます。
 
 
 佐川大樹さん、白柏寿大さんの忍者太郎
 まずは佐川さんの忍者太郎から。その股引はなんだよ……!!!!びっくりした、なんかカラフルだった。っていうのが一番インパクト強いんですが、佐川さん。なんかじわじわと来る忍者太郎でした。かっこよく久美孤ちゃんを口説いていて、いや実際ご本人かっこいいのは重々承知ですしアイステとかでめっちゃかっこいい彼を知っているんですけど、こう、ラブコメにありがちな本人は本気なのに傍から見ると何かジワジワ笑いがこみ上げてくるイケメンだったな、と。優男から本性を露呈した時も這い寄るような恐ろしさがあって、人心を惑わせる妖怪みたいな印象でした。
 寿大さんの忍者太郎。背が高くてちょっとびっくりしたんですけど、こちらはやや強引な性格。佐川さんの忍者太郎が優しくエスコートするタイプなら、もう久美孤ちゃんはオレのもの、とでも言うようにぐいぐい責めていくタイプ。下は脱ぎませんでしたが上で脱いで捨てたり包んで春巻きにしたり。いや久美孤ちゃんのセンスすごいですよね、春巻きて。
 本性も力で押さえつけるような感じで、その体格も含めて力を求めてあらぶっている妖怪っていう印象でした。

 

あと居酒屋フレンズの「麻゛呂゛ぢゃん゛!!!!!」が面白すぎた。無差別麻呂ちゃん。
 


 高木聡一郎さんの田中社長。
 愛すべきクズ社長。大野君とのやりとりはある意味癒やし枠。来客時の「にんにーん」の言い方が何か好きです。真似したい。する機会がない。
 親からだまし取った金でキャバクラで豪遊するどクズだけども25年前の仲間を死なせた後悔から今度こそ仲間を死なせずに忍者太郎を浄化するという使命を全うした人。最後の叫びは胸が熱くなってなんか悔しかった。いやかっこよかったです。
 あと唐突にラップをし始めて既視感があったんですがこの方初代ヒデミンだったんですね……。
 
 あとは雨女さんの「あれはちょっとやりすぎ!」の可愛らしさとか猫神さんの可愛らしさとか、まな板と包丁二本で殺し合う居酒屋とはいったいなんぞやとか色々あるんですがこの辺にて。
 

 

 


 いや本当天邪鬼くん尊い……。

舞台「弱虫ペダル 新インターハイ編FINAL-POWER OF BIKE-」 雑感

 わたしが所謂2.5次元界隈の観劇を趣味として始めたきっかけは2015年、当時働いていた職場の同僚さんが薦めてくれた漫画、弱虫ペダルでした。最初はアニメを休日に一気見して序盤に主人公達とインターハイの座を競い合う二年生、手嶋純太と青八木一の〝チーム二人〟が好きになったんですね。(同僚さん(荒北推し)曰く、わかるだそうでした)

弱ペダ好きな仕事仲間達とナンジャタウンのコラボに行ったり、コラボカフェに行ったり、そんな中で同僚さんがある一本のDVDを持ってきまして。それが舞台「弱虫ペダル」第一作目だったのです。その頃のわたしはテーマパークのショーやパレードが好きだったり、あと劇団四季のWICKEDが大好きで、ある程度観劇趣味の下地は出来ていたとは思うのですが漫画原作を舞台化した2.5次元と呼ばれるエンターテインメントには全く縁が無く「テニミュなら知っています。下剋上ですよね」レベルの認識。そんな中でカラオケの一室で皆とゲラゲラ笑いながら見たのが舞台「弱虫ペダル」との最初の出会いでした。いや舞台としてじゃなくてお笑いDVDとして見てた節は否めません。ハッピーターンとか。
 そしてある日同僚さんとカラオケの一室で観たのが「野獣覚醒」。劇中でタイヤをからからと弄る御堂筋翔に何故だかとてつもなく惹かれてその夜に静かに村田充さんのウィキペディアを眺めていたのです。それが今こんな事になっています。いやー、人生って分からないものですね。
 それからペダステを初めて生で観たのが〝総北新世代始動〟でして、当時の事は覚えています。お正月かな、焼肉行った帰りにキャストが発表されて、村田充さんが出演される事に喜んで。で、チーム二人は出るよね?誰だろ?あんまり役者さん知らないからなぁ……とか思ってたら結構直前に配役が発表されて、それが鯨井康介さんと八島諒さんでした。手嶋純太役の鯨井さんはテニミュの海堂の人というのとPSP遊戯王タッグフォース武藤遊戯の人という事でちょっとだけ記憶にあったのですが(プレイ当時えらく渋い声の闇遊戯だな……と思ってたのを覚えています)、青八木一役の八島さんは全く知らない方で、ググっても情報があんまりなくて駆け出しの方なのか……と正直不安でした。この手嶋純太はジョッキでティータイムしそうという世間の評価に分かる……ってなったのも良い思い出です。
 チケットはもう手元に無くて、多分二回しか観てなかったかな。でもその二回は青八木一を演じる八島諒さんの魅力を感じるには十分で、気がついたら早上がりしてライビュ観にいってましたね。台詞の八割が「ああ、純太」なのに何故か惹かれる。彼のお芝居をもっと観てみたいな、という興味が湧くまでに。
 それから四年です、四年。四年ってあっという間なんですね。あっという間なんだけども色々あったなぁ、色々観たなあ。
 
 思い出話はこれくらいにして、ちょっと大変なご時世の中、観てきましたペダステ新世代FINAL。
 三日目も二回に分けるのか?と思ってたんですが流石に一タイトルに纏めてこられましたね。三日目は特にね、DNFするキャラクターもいるので二回に分けると……。
 楽しかったです。清々しかったです。四年間追ってきたシリーズが終わるという事への寂しい気持ちは確かにあるけど、それよりも清々しい気持ちが上回った。シリーズを追ってきて無事に終わるという経験が初めてだからかも知れない。終わってしまうというよりも走りきってくれた、確かにキャスト変更はあったけれども、それを抱えてペダステというコンテンツが新世代のゴールをきってくれたという感謝があります。
 大阪公演の金曜日マチネから観劇だったんですけれども、初回観劇はずっと泣いてた。あんまり観劇で泣くことが少ないんですけども。西田シャトナーさんの遠い夏のゴッホのラストは本当にすうっと泣いたな。それ以来な気がします。完全に走馬灯体験だった。シーンの一つ一つで過去の公演の思い出とか印象に残った所とかが過って泣く。勿論その場面の熱さや切なさにも泣く。不思議な体験でした。あのね、マスクの中がべしょべしょになるんですよ。
 青八木一のDNFは三日目の早い段階であるんですが(※補足すると彼は二日目終わりから脚を痛めていました)、手嶋純太を助ける為に必死でペダルを回す場面とそこからチームを先頭まで引っ張っていく場面、八島くんの感情の爆発のさせ方が素晴らしい。青八木一として走るのがそこで最後という事もあるけど、そこまで積んできた青八木一としての感情と四年間ペダステを走り続けてきた彼の感情がブレずに重なりあっている。あれだけ脚を回しているのに、台詞も聞き取りやすい。元々感情の発露の仕方が上手く、台詞も聞き取りやすい方なのですが本当に一級品だと思います。贔屓目と言われてもいい。
 あそこの感情の爆発具合や限界まで回す様が新世代始動やスタートラインのスプリントから良い意味で変わらないなぁとも思いました。あそこで合宿やファーストスプリントを思い出したなぁ。
 
 正直全部見所なんですけど、河原田巧也さんが演じる泉田塔一郎のラストスプリントは美しかったですね。河原田さん、唯一前年度シリーズから出演されてて、泉田をずっと演じ続けてこられた方です。前々回のキングダムでも思ったのですが兎に角スプリントが綺麗。今回のラストスプリントの直前に余裕の表情でストレッチをしている動作が入るんですけどもうそこから来るぞ……って観ている側のテンションが上がる。スプリントの緩急の付け方が滑らか。最後の「王者たれ」の台詞も重みが凄まじい。もう毎回心の中でスタオベしてた。
 あとは山岳賞ですね、二人の山岳賞。ここは原作追ってた中で結構納得がいってなくて、ファンの間でもエースである葦木場を出した点について賛否が分かれていた所だったと記憶しているのですが、黒田の台詞で一気に説得力が増したのはおお、と素直に納得のいったところです。エースの葦木場の望みと、チームの戦略面でのメリットを勘案してゴーを出した。確かにあり得る作戦だなぁ、と。
 富永勇也さんの葦木場拓斗も素晴らしかったですね。箱学のエースとしての重みや葦木場というキャラクターの底の知れない独特の雰囲気が身体から発せられていて、それでいて手嶋と山岳賞を競えるという抑えきれない喜びも孕んでいて。走りの圧もすごかったなぁ。
 手嶋純太役の鯨井康介さんには感謝しかなくて、ペダステをここまで魅せてくれてありがとうございますという思いが強いです。手嶋純太の一言一言をあれほど納得の出来るものに演じていただいて、そう、ストンと胸に落ちるんですよね。ヒートアップのティーブレイクとか、今回の無茶のくだりとか。鯨井さんが手嶋純太を演じ通してくれて本当にありがたかったなぁ、八島くんや鳴子章吉役の百瀬朔さんとかも、同じキャラクターを演じ続けるって簡単な事ではないし、キャス変でキャラを受け継いだ役者さんもプレッシャーはあっただろうし。この状況もあって終わってから色々と考える舞台でもありました。運営の方も大変だっただろうな。
 本当はね、病とかそういった不安ごとはないほうが絶対いいのですけどもね、わたし二週間ヒヤヒヤしっぱなしだったし。
 
 いやーでも、終わっちゃったなぁ、最高だったなー!またいつか観れたらいいなぁ、ペダステ。

勇者セイヤンの物語(真) 雑感

 
 ロールプレイングゲーム(英: Role-playing game, 略称:RPG)とは、参加者が各自に割り当てられたキャラクター(プレイヤーキャラクター)を操作し、一般にはお互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲームである。
 ――ウィキペディア参照
 
 今年もよろしくお願い致します。推しくん、推しさん、関係各所様方には何卒健やかに活動出来ますよう、そして皆様が良い推し活が出来ますよう、お祈り申し上げます。わたしは今から夏の某スポーツの祭典期間付近の足と宿取りをどうするかで頭を悩ませています。発表されぬチケットの皮算用とか言わないで。
 というわけで2020年になってしまいましたが、2019年12月に公演された爆走!おとな小学生さんの「勇者セイヤンの物語(真)」の大阪公演(27日~30日)を観劇致しましたので、雑感を書いて行きたいと思います。観劇日は27日マチネ、28日マチネ、30日ソワレ大千秋楽。
 勇者セイヤンシリーズ、残念ながら前回の(仮)は見られずじまいで一昨年の(予言)のDVDを鑑賞していただけなのですが、今回の(真)を見てああ……ってなりまして、(予言)の一部ネタバレに言及するような事を言ってしまうかもなのでご注意ください。なるべくオブラートには包みたい。
 
 そもそもロールプレイングゲームのロール(Role)とはなんぞや、という話から始まるんですが、ロールプレイ、想像上のとある役割を演じ、ゲームを攻略していくっていう内容がウィキペディアなりネットなりで調べたら出てくるのですが、セイヤン(真)は〝役割〟とは何か、をずっと考えさせるようなお話だったなぁと思います。
 テーブルトークRPGだとダイスの目によって決まる能力値以外は割とプレイヤーの自由が効くんですけど(※それがGMの裁量で可であれば)、コンピューターゲームRPGは基本的に、ストーリーをなぞる為に主人公には役割が与えられているんですね。それは今回のセイヤンが自称する【勇者】だったり、【親友と謎の遺跡で遊んでいたらいつのまにか世界を救う旅に出ていた漁村生まれの少年】だったり、【めっちゃ強い傭兵を自称する金髪のツンツン頭の青年】、【入院している担任教師のお見舞いに行ったら東京が滅んで彷徨う事になったごく普通の高校生】等と様々な設定と共に主人公を旅立たせて、そしてだいたいの最終目的はラスボスを倒して世界を救う。そんな役割を与えられている。ゲームハードが進化して、主人公が【勇者】にならない選択肢がとれるゲームも出てくるようになったけれども、それでもエンディングであるエンドロールを見るためには、大体、世界を救わなければならない。
 そんな主人公というキャラクター、この物語ではセイヤンという自称勇者の少年を中心に世界は回っていて、セイヤンの為にフラグが立ち、ストーリーが進んでいく。彼が進まなければ、ストーリーも進まず世界も停滞してしまう。そして奇妙なのは、セイヤンは自分が勇者であり、この物語の主人公であることを自覚している事。そしてその先代であり尚且つ先々代である勇者ユウシャンも、先々代、本来の自分のの世代では自らが選ばれてしまった勇者であり、物語の主人公と自覚している。更にユウシャンは自分の世代で旅をしていた当時からセーブ機能を持ち、自分(プレイヤー)がゲームクリアを諦めない限りは何度でもやり直せる事を自覚している。ただし、未来の事は分からない。分からなくて当然なんですけどね、それこそSNSでネタバレされない限り、プレイヤーはその先のストーリーを知りたくてプレイしているんだから。
 勇者セイヤンの物語が、どこからどこまでが制作者(ここで指す制作者は脚本演出の加藤光大さんではなく、ゲームの制作者、シナリオを作った人の意味。いやどっちにしろ最終的には加藤さんなんですけど)の書いたシナリオだったのかというのをずっと考えていまして。例えば冒頭にエタノールとぶつかり、ポップコーン王国のコロシアムの優勝賞品である彼女を得るだけが本来のシナリオなのか、はたまた徹頭徹尾、勇者ユウシャンが三週目の勇者になるべくセイヤンの前に立ちはだかり、エタノールが〝我が儘を貫く〟までがシナリオなのか。個人的には後者かなぁ……とかは考えていたりします。後者だとユウシャンパティーの呪術師くんの死も、町の人2もとい山賊の女の子の死もシナリオであらかじめ決められたイベントであり役割であり、そしてそれを見聞きし体験したセイヤンの未来と課せられた役割を思うとなんかこう、思うところがありすぎるんですが。(予言)また観たいな、DVD観ようかな。
 役割って、扱いが難しいですよね。自分らしく生きられる指標であり、自分を縛り付ける枷でもあるし。
 本来の役割を奪われ町の人という役割を課せられた旅の一行とか、セイヤンを助ける役割を担ったセイヤンチームの面々やオバサン。先々代の勇者という役割を授かり前に進むしかなかったユウシャン一行、勇者に倒されるという役割という運命を疑問も無く受け入れるモンスター達やそれに疑問を抱いてしまったラスボス。最終的に二人の勇者を導く狂言回しの役割を与えられた呪術師、そして勇者という主人公の役割を自覚するセイヤン。
 そして何よりどう考えても色んな役割を担わされすぎてて完全にモブのような扱いなのに最早いないと困るオジサン。あなたはどのオジサンが好き?わたしはいきなり哲学の授業始める先生のオジサンが好き。
 最終的にセイヤンは過去を否定せずに全部ひっくるめて旅を続けるつもりだったけれども、エタノールの我が儘でほんの少し別の結末を迎えたみたいで、当初のシナリオ通りかどうかは分からないけど、そんなゲームを体験したわたしは少し不思議な感覚に包まれながら上記の事をぐるぐる考えています。
 エタノールの戦い続けるっていう台詞はは回復アイテムとして皆が笑顔になれるように戦い続けるって意味なのかなぁって解釈してみたり、最後のシーンの解釈はだいぶ人によって分かれそうなんですよね。
 
 今回気になったキャラクターとか役者さんとか。
 
 今口を開けばとりあえず大阪のオバサンの事を喋るぐらいには大阪のオバサンが大好きなんですけど、いやほんと新井さんのオバサン、めっちゃいい。面白くて若干天然で母性がすごくて頼りがいがあってかっこよくてその上美脚ってすごいなぁと思うんですよあのオバサン。相変わらず殺陣もかっこよくて素晴らしい。この件に関して何回でも加藤さんにお礼を言いたい。BARババア閉店とか寂しすぎるので暫くは心の中にBARババアを常時開店させてお仕事頑張りたいです。東京のオバサン(完全体)も観たかったなぁ。いや本当にキャッツアイの時にわちゃわちゃしたりポーズ決めるW(ダブルオバー)最高にキュートだからみてほしい。DVDで。
 多分現役の時とかに酸いも甘いも経験して色んなものを諦めたりして、それでも生きてなんぼと悟った彼女のやり方がBARババアなのかなと思うと、多分無許可だろうしリスクもあるけどそうせずにいられなかったんじゃないかな。あとオジサンとの対比が面白いなぁって思うわけです。囲われる事である意味特権階級を得たオジサン、生きてなんぼと街の人達を励ますけれども自由が一番だと知っているオバサン。
 
 
 副島さんの呪術師。ツイッターでも呟いたんですけど狂言回しとして怪しさが強い序盤からユウシャンの行く末を案じて憂い、セイヤンに助けを求めるような雰囲気を出してくる終盤へのシフトが素晴らしい。
 マジカル零で箱全体を困惑と爆笑の渦に叩き込んだジャヤヘーがこんなに活きるとは思わなかったしこれ実質副島さんにしか出来ないのでは……ってぐらい唯一無二感がすごい。
 ユウシャンチームのムードメーカーで呪術師という職業の字面に似合わないぐらいに陽気なキャラクター……なんですが「振り向かずに前に進んでください」の一言でユウシャン一行をここまで縛り付けたのはやっぱり呪術師故ではと思わずにはいられない。
 大阪初日マチネの終演後ずっと頭の中でぼんびりびりぼん……とぐるぐるしていたのもきっと多分彼の幸せになる呪いなんだと思う。ぼんびりびりぼん。
 
 春川さんのライッチュンちゃん。めっちゃ男前でええ子やんこの子……と思いながら観てたのですが、春川さん、(予言)でスラウィムボーグ演じていた方だったんですね。かっこよすぎる。(確認の為にセイヤン(予言)のHP眺めてたらなんとネルケ版セラミュのスターファイターの方でした。そらかっこいいわ)
 ユウシャンに拾われる前のつらい過去とかもあってスラウィムやピッカチュンにキツい口調で忠告していたのかと思うとああいう不器用だけど優しい子、いいよねってなりますよね。
 ユウシャン一行なんですがラスボスに近付くにつれて旅も過酷になっていく中で精神が疲弊していって進むか仲間の命をとるかで皆黙りこくってしまうあたりがめちゃくちゃ生々しくて居心地の悪さが凄くて、それが印象的だったんですよね。彼らの準備不足という言い方も出来るけど、モンスターよりちょっと強いだけだとかなり苦戦することもあるのでまさしく「こんなに過酷とは思わなかった」んだと思います。ユウシャンが最後にセーブしたのが一ヶ月前でそれがこまめにセーブを取らなかったという凡ミスになるのか、それとも物資が枯渇した状況で進むも地獄、戻れるかどうかすらも怪しい状態で迂闊にセーブして詰み状態にならなかっただけマシととるかは意見の分かれそうな所ではありそう。
 どちらにせよ呪術師くんが確定した死亡イベントなのか、それとも回避出来た事故だったのかは、今やシナリオを書いた人にしか分からないというところが、ちょっとだけ酷だなぁ、と。
 
 須永さんが演じたスカーレットくん。相変わらず須永さんのきゅるっとしたあざとい声からのめちゃくちゃドスの効いた声への豹変が好きです。目覚ましにしたい。あとぴょこぴょこしながら一心不乱に攻略本めくる姿がちょっと目が離せない。謎の中毒性がある。
 アイポンを駆使してセイヤンを助ける非戦闘型NPCな彼ですが、彼が出てくるとほっとしますね。妙な安心感。彼が出てきたらストーリーが進展したんだなぁとほっとするような感じ。死の間際までセイヤンを励ます姿はお助けNPCの鑑だと思います。
 
 街の人2役の石原さん。
 「ようこそ、ポップコーン王国へ」の一連の場面が凄かったですね。石原さん、感情を爆発させる演技がめちゃくちゃ良い印象はジャシステ再演の時から感じていたのですが今回の一度感情を爆発させた後の、スッと我に返ったように「もういいや」って言う声の冷たさに背筋が凍るような感覚を覚えました。前回観たマジカル零のあの現実逃避した無機質感とはまた違った冷たさ。奪われすぎて本当にどうでもよくなってしまった人間の自暴自棄感が出ていてこの方本当に凄いなぁと。この方の色んなタイプの狂気を内包した演技を見る事が出来た2019年でもあったなぁと思うわけです。
 
 4面のボス、林さん。
 いやヴィジュアル公開の時点で「美しすぎでは?」と二度見したんですが舞台上でもやっぱりお美しかったです。一番好きなのはコロシアムでセイヤンチームと戦った時に衝撃波のようなものを放った時の動き。バトルであの衣装がひらめくの本当かっこよくないですか。
 冷酷な、という設定を持ちつつ冷酷になりきれずなんだかんだで色んな人(モンスター)のお世話を焼いちゃう姐さん。愛読書は腕が伸びるありったけの夢をかき集めた人の本。基本的には合理的であろうとするけどどうしても情に弱い部分があるのが凄くかわいいな、と。3面のボスとのやりとりも姉弟めいていてほっこりしました。
 
 釣本さんの三面のボス。
  観ていくごとにどんどん好きになっていく。かわいい弟みたいなキャラ。個性、大事だね……。ラスボスになりたいと常日頃から言いつつちゃんと経験値もあげてラスボスに見合った個性を模索する姿をみるとこのこめちゃくちゃ真面目なんだろうな……と思わずにはいられません。
 大千秋楽の暴走っぷりもあのキャラだからこその愛嬌と面白さがあって本当に楽しませてもらいました。ついにツノが取れたの本当面白かったしハリセンの仕事ぶりが凄まじかった。あと三面のボスのビジュアルもめちゃくちゃいいですよね。あのメイク、凄い映えてる。回を増すごとにどんどんハリセンがいい音なってて、一番良かったのは大千秋楽のスラウィムナイトくんの尻をぶっ叩いた時の音だと思います。めっちゃ痛そう。
 
 オジサン、山田さん。
 ご親戚が沢山いるおかげでモブキャラを強要されている街の人達よりもモブキャラっぽいオジサンですが寧ろそれが個性すぎて忘れられないキャラ。RPGにいますよね、忘れられないモブキャラって。
 キャッツアイの場面の双子のオジサンからの叔父のオジサンもだいぶ笑ったんですけどやっぱり教師のオジサンがジワジワくる。友達が出来たね教師のオジサン……よかったね……

ラスボス、姉のオバサンの加藤さん。
 ラスボスくんの「バーカ!!!」の言い方が大好きなんですよね。学生時代にグレて皆につっけんどんな感じで接したりして悪ぶりつつも友達として大事に思ってるのも分かるし、〝RPGの法則をねじ曲げる〟のも自分達の世代になって友達との関係性が変わってしまってもモンスター側の平和を守りたかったんだろうなあっていうのが察せられるというか。人間側とモンスター側、もっと言えば人間側にもユウシャンとセイヤンのやり方は180度違うし、モンスター側もラスボスとエタノールのやり方は違っていて、それでも目指しているものが同じなのが複雑だなぁと思いました。
 あと姉として出てきたのが嬉しかったです。ありがとう美脚のオバサン。エタノールの力で世界が一巡した後も多分妹とわちゃわちゃキャッツアイしてるのかと思うとやっぱりBARババアは心の中で開店しているんだ……。ありがとうW(ダブルオバー)……。
 
 (真)のオープニングが本当に好きで、あの不穏な曲調が本編とマッチしてるのいいですよね。これからセイヤンに降りかかるイベントを暗示しているのがとても良かったです。純粋にかっこいいし。
   
 大阪大千秋楽のダブルカーテンコールで(予言)フラグがたったので楽しみ。いつなんでしょうね。王子に会いたい。

舞台「キクネ」雑感

気がついたら今年も残りわずかとなりましたね。

というわけで今回は劇団TEAM-ODACさんの「キクネ-僕らに出来ること-」を観劇致しました。観劇日は12/17。(これ上げた日が千秋楽っていう)

観劇前に上野の国立科学博物館でミイラ展も行ったりしたんですがすごかったです。年1で科博は行ってるんですが来年はハンター展行きたいですね、オリンピックで混んでるかなぁ。


さて「キクネ」ですがこちらは居酒屋チェーン店、赤からとのコラボ舞台との事で公演前日に推しさんの赤から制服姿の写真を見て「へー、推しさん店員役かぁ、バイトさんかな」とか呑気に考えながらいたらまさかの店長役で店長!?とびっくりしたりですね。

ここであらすじを見返してみるとクレームの多い店舗で売り上げがダウンしてるとか書いてあって「あっ(察し)」みたいな顔でそうか、クレームと売り上げとシフト調整で胃が痛くなってしまいそうな推しさんが見れるのか…とか考えてました。

十二人の一号さんもそういう立ち回りだったなぁ。

観劇したら案の定そういう役でしたね、パーティータイムのくだりはジワジワきた。なにあの空気。

キャラ的にはいい人だけど店長としては頼りなくてスタッフと客に振り回されてこれは胃に風穴があくなって考えつつシフト調整したり売り上げと睨めっこしたりしながらノーツカタカタしてたりキッチン業務頑張る姿にほくそ笑んでいたんですが。推しの働く姿五億点(安直)。


全体的なお話しましょうかね。

脚本個人的にはお口に合わなかった。

というよりもあるあるの展開すぎるのも大きな一因なんですが、やはりあの主人公のりんごちゃんがレモンサワーぶちまけちゃってからの下りで一瞬にして冷めてしまったという感じ。

なんだろな、余りに唐突すぎたのかもしれないし心象風景が過激すぎたのかもしれない。りんごちゃんの積もり積もった鬱憤が爆発したって演出なんだろうけど心象風景でもいきなり皆殺しはないだろうよと思ってしまった。

あの場面、サワーをぶちまける→皆に責められる妄想に入ってしまう→鬱憤が爆発してりんごちゃんの心の擬人化の正義が携帯していた拳銃で店員も客も皆殺しにする心象風景っていう流れだと考えてるんですが伏線はあった(嫌いな父親を想像で何度も殺した、正義は何故か拳銃を持っていた)けども一気にそこまでに行き着く思考を彼女が持ってたのか、と感じ取れる場面が少なかったので唐突に思えたのかもしれない。あとりんごちゃんの心象風景で守ってやると啖呵切った父は一体何者なのか。りんごちゃんの押さえ込んでいた本当の父の印象なのか、そうか。

あとやっぱりエピソード詰め込み過ぎではって印象。

その点なんですがこれ情報みたら原案がコラボ先の赤からさんなんですよね。アンケートとった中のエピソードを〜って書いてたから恐らく脚本書くにあたって「これとこれとこれのエピソードを入れて親子の感動物語的な感じで赤から行きたくなるような良いお話にしてください。わかりやすく(重要)」みたいなリクエストがあったとしたら難易度相当跳ね上がると思うんですけどどうなんだろ。そもそもどれが採用したエピソードなんでしょうね、どいつもこいつもアレなお客様すぎるし従業員も相当不穏。大内店長は泣いていいよ。無能店長だけど。


あっ、観劇終わった後に行った赤からは美味しかったです。食べたのは赤から鍋の一番。普通に美味しいし〆の後のチーズリゾットがうまうまでした。後はえびふりゃー。


今年の推しさん納めかぁーとか考えながら飲んで食ってバス乗ったら秒速で寝て起きたら大阪で仕事でした。繁忙期のピークは超えたから無問題無問題…。

ちなみに観劇納めは30日。仕事納めは31日。頑張っていきましょうねぇ。